ママたちが言った
アリシア・D・ウィリアムズ文
ブリアナ・ムコディリ・ウチェンドゥ絵
落合恵子訳
クレヨンハウス
2023年
2200円+税
表紙裏から
アメリカ合衆国で「黒人」と呼ばれたり、褐色の肌に生まれた子どもが、子ども時代のある時に学ばなければならない幾つもの厳しい約束のようなもの。この絵本は、それをテーマにしています。「ジャケットのフードをかぶっちゃいけない」「群れて遊んではいけない」「ポケットに手をいれてはいけない」・・・・・。ごくごく幼い無垢の季節を少しだけ卒業した子どもたちは、こうして幾つものルールを教えられ、身につけて行くのです。もしジェイが自分だったら・・・・。ジェイとこれらのルールを「トーク」しなければならないママたちもまた、先代のママたちから教わってきたのです。生きのびるために、死なないために。
コレッタ。スコット、キング賞受賞
2023年オナー賞受賞
作家のアリシア・D・ウィリアムズさんから日本の読者へのメッセージ
壁を作る必要はないはず
私たちはお互いの「違い」にフォーカスしがちです。しかも、ネガティブなレンズで、その違いを強調してしまう。それが人間の習性なのかもしれませんが・「彼らVSわたしたち」という壁をつくりがちです。たとえば、アフリカ系の少年で、あなたとは違って見えるかもしれません。
絵本の中で、ジェイとその友人たちを見ているひとがいることに気づくでしょう。ひとびとは彼らを不審に思っています。彼らにとって、ジェイとその友人たちは、トラブルメーカーに見え、「あの子たちは何を企んでいるのかわからない」と思っているかもしれません。実際には、ジェイはお手伝いお手伝いをしておこづかいをもらい、音楽とダンスとスケートボートが好きな少年です。そして、彼と友人たちは。自分たちらしく人生をたのしみたいだけなんです。でも他人は、ジェイたちのたのしみや好奇心、冒険心を知らないのです。
わたしたちはお互いに壁を必要はないはずです。みんなで「違い」を認め合い、お互いから学び、それぞれの個性を祝福してみませんか。共通点を発見して欲しいですね。
大人は子どもたち、「自分がされたいよう、ひとに接しなさい」「ひとの立場になって考えなさい」「親切にしなさい」とおしえますよね。共感はやさしさの表現です。これらは、よりしあわせに生きるための基本だと思います。
個人的なことですが。
30歳頃、短い期間ででしたがボストンで暮らした事がありました。昼間あまり人が歩いていない時間帯でした。私は地下鉄に乗ろうと、ボストンの割と広い歩道を歩いていました。少し後ろを、「褐色の肌」の20歳台くらいの背の高い頑丈そうな男の人が歩いて来ました。怖くて背部に意識を集中しました。地下鉄の入り口へのドアが近くなった時、彼が急に走ってくる気配がしました。思わず、鞄をしっかりと抱え、身構えました。
彼は私を追い越し、地下鉄のドアまで走り、私の少し前を歩いていたベビーカーを押した母親のために、すばやくドアを開け、その母親とベビーカーの中の赤ちゃんのためドアを開けたまま押さえて、エスコートしたのです。
そう、私の前に、ベビーカーを押したふくよかな母親が、地下鉄の入り口のドアに、さしかかろうとしていたのです。
彼は、とても自然に。ごく当たり前に、彼女をサポートしました。
彼女は、ごく普通に、笑顔で サンキュー。
彼も、軽く横に顔を振り、どういたしましてって感じで。
私は自分を恥じました。
彼を怖がった自分に。
163cm、53sの私は、大きな「褐色の肌」の知らない青年が、怖かったのです。
「差別」、、、。
この絵本を読んで、あの時瞬間的に「差別」した自分を思い出し、また恥じました。
わたしたちだけのときは
-
- デヴィッド・アレキサンダー・ロバードソン 文 ジュリー・フシッド絵
- 横山和江 訳 岩波書店 1400円 2018年
-
-
-