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母と娘adult

「白雪姫」

 
グリム原作
たかのもも
フレーベル館
1400円
 誰でも知っている?白雪姫。
 しかし、「本当は恐ろしいグリム童話」桐生操 KKベストセラーズ1500円を読むと、「白雪姫」の絵本を手にできなくなるかもしれません。

 また、「おはなしの知恵」河合隼雄 朝日文庫
 680円の白雪姫のところから、少し抜粋してみます。
P43から
 「継子いじめ」の話は、世界中にあると言ってもいいだろう。日本にも沢山ある。どうして人間はこれほど「継子いじめ」の話が好きなのであろう。ところで、グリム童話のその後の研究によると、これはもともと継子の話でなくて、実母と娘の話であった。それらを、グリム兄弟が集めて書物にするとき、実母がこんなことをするのはあんまりだと継子に変えてしまった。しかし、ほんとうのところ、実の母と娘の間でも、このように凄まじい感情が働くこともあるのだ、と考えた方が人間を理解するのに役立つのではないだろうか。
 白雪姫の実母と継母として対照的に描かれている特性は、実は母性というものの両側面である。限りなく子どもの幸福を願い、子どもを慈しむ側面と、子どもの存在をまったく無視して、死さえ願う側面と。この両側面がうまくバランスをとって母性ができあがっている。このような事実が見逃されて、たてまえのこととして、母性というと、子どもを育てる、慈しむという面のみが強調される傾向がある。わが国においては、それが非常に強かったと言える。従って、ひたすら子どもに献身する母物語が多く語られる反面、それを補償するためもあって、母性の否定的な面が「継子」として語られる「継子いじめ」の話を多くもつことになったと考えられる。ほんとうのところは、別に「継子」などにする必要はなかったのである。
 白雪姫について以外にも、桃太郎、絵婆女房、花咲爺、かちかち山など、おはなしを取りあげ、おはなしが現代人の生死にかかわっていくか、「おはなしの知恵」の中で河合隼雄先生が、解説してくれています。 
昔からの「絵本」、「おはなし」は深いです。

シンデレラ


ペロー童話
エロール・ル・カイン絵 
中川千尋訳 ほるぷ出版 1300円

心理学者の河合隼雄先生の本に、「物語から学ぶこと」というタイトルで次の文章がありました。

「シンデレラ」の話では、母親が自分の娘の足を靴に無理やりにはめこむために、娘の足を削るところがある。このときも娘の感情については、まったく触れられていない。昔の人も感情鈍麻だったのだろうか。もちろん、そんなことはない。
 秘密は「お話」というところにある。実生活においては、娘の手を切ったり、足を削ったりする親はめったにいない。そんなことを「お話」として語る。聴衆はそれらをすべて「あったこと」として聴くことになっている。だからこそ、娘が手を切られたりすると、「ひどいことをする」などと反応する。強い感情は聴き手の方に生じる。そして、「なぜ、そんなひどいことが」とか「馬鹿げたことが」と思っているうちに、実際は多くの親が、娘と恋人との間の「手を切る」ことや、大学の「狭き門」に入れこむために子どもの「身を削る」ことなどをやっていることに気づく。つまり、自分があまりにその意味に気づかずにしている行為を拡大して示してくれることによって、そこで感じるべき感情を体験するようにしている。これが「お話」の特徴である。「お話」によって、はじめて真実が伝えられるのである。
ニュースは事実を、お話は真実を伝える。

「人生」ことはじめ 河合隼雄 講談社 1996年 1300円  P99より

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