グリム原作 たかのもも フレーベル館 1400円 |
ペロー童話
エロール・ル・カイン絵
中川千尋訳 ほるぷ出版 1300円
心理学者の河合隼雄先生の本に、「物語から学ぶこと」というタイトルで次の文章がありました。
「シンデレラ」の話では、母親が自分の娘の足を靴に無理やりにはめこむために、娘の足を削るところがある。このときも娘の感情については、まったく触れられていない。昔の人も感情鈍麻だったのだろうか。もちろん、そんなことはない。
秘密は「お話」というところにある。実生活においては、娘の手を切ったり、足を削ったりする親はめったにいない。そんなことを「お話」として語る。聴衆はそれらをすべて「あったこと」として聴くことになっている。だからこそ、娘が手を切られたりすると、「ひどいことをする」などと反応する。強い感情は聴き手の方に生じる。そして、「なぜ、そんなひどいことが」とか「馬鹿げたことが」と思っているうちに、実際は多くの親が、娘と恋人との間の「手を切る」ことや、大学の「狭き門」に入れこむために子どもの「身を削る」ことなどをやっていることに気づく。つまり、自分があまりにその意味に気づかずにしている行為を拡大して示してくれることによって、そこで感じるべき感情を体験するようにしている。これが「お話」の特徴である。「お話」によって、はじめて真実が伝えられるのである。
ニュースは事実を、お話は真実を伝える。
「人生」ことはじめ 河合隼雄 講談社 1996年 1300円 P99より
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